季語のたのしみ⑦ 青梅雨

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 季語:青梅雨 (あおつゆ)(仲夏)

 

 梅雨というと鬱陶しく、じめじめしたイメージがある。洗濯物が乾きにくくなり、カビが生えやすくなる時期でもある。持病がある人は、腰や膝が痛くなり外出も億劫になり暗い気分になる。しかし、俳句を始めてから、若葉雨、青葉雨、茅花流し等、雨には沢山の素敵な名前があることを知る。「青梅雨」というと、色彩も鮮やかなイメージに変わり、しっとりと潤いのある青葉や青草に見えて明るい気持ちに変わる。

 

  青梅雨の瓜青々と漬けあがり    鈴木真砂女

 

  真砂女さんは、老舗旅館の女将から転身し、銀座の小料理屋「卯波」の女将として半生を過ごす。波乱万丈の人生であったが、俳句と共に二人三脚で生き、90歳を過ぎるまで店に立ち続けていた。その店で、毎日料理を作っていた一齣である。「青梅雨」の季語により漬物の野菜のみずみずしさや色を引き立たせ、美味しそうである。来客を待つ店主の温かさ、常連客が暖簾を潜る様子が目に浮かぶ。

 

 青梅雨の濡らして帰るハイヒール  高尾早弓

 

 木々の葉から枝から雨粒が落ちてきて、お洒落に履いてきたハイヒールが濡れてしまう。

「青梅雨」の季語により濡れてしまったと憂鬱な気分にならず、街路樹が美しく見えてくる。コツコツと歩く音と雨音が重なりあい、家路に向かう女性をやさしい雨が包み込むような感じがする。 (ひ)